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    「あいつももう仕かたがないのですよ。『青ペン』通いばかりしているのですから。」

    顎から後頭部にかけてと背部と二所を大きく繃帯でぐるぐる巻きにされた男は、やがて待合室へつれて行かれ、ごろりと転がされた。はじめからしまひまで一言も口を利かなかつた。

    が、練吉が駆け登つたのを見ると、先方の男は急に威丈高になつて怒鳴つた。

    練吉は小学校時分のことを思ひ出したのかふいにをかしさうに笑ひ声を立てた。

    盛子は房一からさういふことを聞かされていたので、往診に出掛ける時には彼女の方から念を押したほどだつた。房一は四時までには帰ると答へた。だが、もう五時過ぎだつた。そして、日が落ちてからの空気は、まるでわざと盛子の気を落ちつかせまいとするかのやうにどんどん暗くなり、冷えて行つた。

    「化物が出た……」と、根津は笑った。「どんな物が出た。」

    小谷は房一に話しかけた。

    「君に云つとくが、何んだぜ、小倉組の者なんかにかゝり合ひをつけちやいかんぜ」

    「やあ、しばらくで」

    「ほう、さうか。それはちつとも知らなかつた」

    と、小谷は目を丸くした。欲しさうだつた。すると、逸早く、

    「わたしやア――」

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